藤野は電車や車から眺めると緑豊かな場所ですが、実際に里地里山の中に入ると、放棄されて荒れた場所や土砂崩れを起こした場所が目立ち、鳥獣被害も深刻化しています。
これは全国各地の中山間地域で共通して起きている問題です。
私たちは、行政や各地区の住民の理解と協力を得ながら、環境再生と地域の活性化の活動エリアを広げています。
各地区の風土、特色を活かした体験型の活動を展開し、地域内外の多くの人たちにご参加いただきながら、これまで代々受け継がれ大切に守り育てられてきた里地里山を持続可能な形で次世代に繋げていくことを目指しています。
小渕地区

メグモリ(人と自然が巡る森):2022年2月〜
藤野駅から徒歩15分ほどの場所に位置し、かつては溜池や棚田を利用して治水と米作りが両立されていた谷あいの場所です。
武田軍の狼煙台跡がある鷹取山へと通じる登山道もあり、人の通り道からの環境改善を実施中。
棚田の石垣は江戸時代に築かれたもので、田んぼとしての再利用は難しいが、治水の機能や多様な生物が生息する、フィールド全体をビオトープとしていく予定です。

有機栽培の田んぼづくり:2024年1月〜
昭和初期から、農薬や化学肥料を使わずにお米作りを続けてきた個人所有の田んぼです。
田起こしから田植え、収穫後はみんなで餅つきなど、四季を通じた体験の場となっています。
田んぼの周辺環境の整備を行い、自然の循環機能、全体視点でお米作りを学びます。
佐野川地区

風吹く丘の茶畑:2025年1月〜
佐野川地区は、かつて150軒もの茶農家が営んでいた歴史ある地域です。しかし、近年では茶畑の多くが放棄され、その景観と文化が失われつつあります。
この放棄茶畑にて、人の手作業で持続的に行える整備方法(機械や肥料を使わず、土壌の水と空気の循環を改善することで地力を高め、自然な樹形で茶の木を育てる方法)と、新たな付加価値を生み出すことに取り組んでいます。
冬の寒さが極まる2月に剪定した枝を、薪火焙煎と数ヶ月寝かせて熟成させた「三年番茶」として仕上げています。

上岩地区全体の環境整備:2023年7月〜
担い手の減少により放棄地となってしまった竹林、キウイ畑、ゆず畑を地域の人たちとともに整備しています。
藪地を整備することで鳥獣害の抑制にもつながります。
整備した場所では、たけのこやキウイ、ゆずの収穫体験を行い、地域資源の活用を図っています。
また、コンクリート護岸工事により詰まった沢の再生にも着手しています。
吉野地区

ふじのマレットゴルフ場:2022年9月〜
相模湖インターチェンジから車で5分、38,138㎡の斜面地に広がるマレットゴルフ場。オープン以来、多くの人々に親しまれていますが、踏み固めや過度な草刈りによる環境悪化が課題でした。
地域の人たちと協力し、緑豊かなコースと自然環境を実現するため、2022年9月から本格的な整備活動をスタート。
2025年春からは、一部のコースで養生期間を設け、より踏み込んだ環境改善の実験を行っています。

下川橋:2023年7月〜
昔、藤野と相模湖を往来する人たちが利用した甲州古道。
かつては地域の人たちの生活用水として使われ、ホタルの生息地として豊かな沢でしたが、中央高速、中央本線の敷設と土砂災害対策の護岸工事より沢の水脈が分断され水量が激減し、土砂の堆積や竹林の荒廃が進んでいます。
沢と周辺の整備を行い、景観と環境改善を進めています。

縄文ファーム:2025年2月〜
物価高騰や食糧問題への関心が高まる中、自ら作物を育てる安心感を提供する場です。
機械や化学肥料を使わず、できるだけお金をかけずに、女性や子どもも参加しやすい農の形を模索し、「助け合い、分かち合い、語り合い」をテーマに、持続可能なコミュニティを育んでいます。
日連地区

有機栽培の田んぼ作り:2025年1月〜
「水の山」と称される金剛山の麓には、かつて一面に広がる田んぼがありました。しかし、高度経済成長期の宅地開発や高齢化の影響で、営農される田んぼはごくわずかに。
金剛山の湧き水を活かした有機栽培の田んぼ作りを地域の人たちと進めています。
藪化した周辺の整備を行い、風通し・日当たり・水の循環を考慮した持続的な米作りを実験・体験を通して学んでいます。
沢井地区

沢井川:2023年12月〜
かつて地域の人々が釣りや川遊びを楽しんできた川。
しかし、少子高齢化の影響で手入れが行き届かなくなり、河川敷の藪化が進行。陣馬山への登山客が通るため、景観や観光面でも課題が生じています。
刈払機を使った従来の管理方法を見直し、省力化しながら広範囲を維持できる持続的な草刈りの手法を取り入れ、生物多様性の回復、景観改善に取り組んでいます。
各地区の特色を活かしながら、人と自然が共生する持続可能な里地里山の未来を描いていきます。