2025年春、佐野川地区にある放棄された茶畑の整備を開始しました。
この場所は、数年間手入れがされておらず、茶の木が2〜3メートルの高さにまで成長し、枝葉が密集している状態でした。陣馬街道に面しており、かつては整然とした茶畑が広がっていたと考えられますが、現在は視界が遮られ、野生動物が身を隠す場所となっており、鳥獣害のリスクが高まっています。

高齢化や担い手不足により、全国的にこのような放棄茶畑が増加している現状があります。そこで、私たちは「三年番茶づくり」を通じて、持続可能なお茶の生産と環境改善を目指す実験的な取り組みを始めました。
お茶の木の剪定と環境への配慮
放棄された茶畑では、茶の木が自由に成長し、枝葉が絡み合って密集していました。このような状態では、日光や風が地面に届かず、茶の木や周囲の植物の健全な成長が妨げられます。
一般的な整備方法としては、機械を用いて茶の木を一斉に刈り込むことがありますが、急激な環境変化により茶の木が弱り、枯れてしまうリスクがあります。そのため、私たちは茶の木の枝を根元から間引く方法を採用し、徐々に日光と風通しを改善することを目指しました。この方法により、茶の木や周囲の生態系に過度なストレスを与えることなく、自然な再生を促すことができます。

三年番茶の原料となる枝の選定
剪定した枝の中から、太さが小指程度のものを選び、三年番茶の原料として利用します。

選定した枝や葉からゴミを手作業で取り除き、軽トラックに積み込みました。

これらの枝は静岡県の焙煎施設に運び、以下の工程で三年番茶へと加工されます。
- 枝と葉を分別し、チッパーで粉砕します。
- 直火の焙煎機で焙煎します。
- 焙煎後、粗熱を取り、半年ほど熟成させます。
- 秋頃に再度焙煎し、完成となります。




このように、三年番茶は長期間熟成させることで、土地の養分を多く含み、すっきりとした甘みのある味わいが特徴となります。
剪定枝の活用と土壌改善
三年番茶用の枝を確保した後、残った枝は斜面の土留めとして利用しました。

枝を横に組んで設置することで、雨水の流れを緩やかにし、地中への浸透を促進します。また、枝葉が泥水を濾過する役割を果たし、微生物の活動を活性化させることで、土壌の状態を改善します。
さらに、茶の木の根元には移植ゴテで点穴を掘り、炭と枝葉を埋め込みました。
これにより、締め固まった地面に水と空気が行き渡りやすくなり、茶の木や周囲の植物の根の成長を促進します。

実際に点穴を掘ってみると、10cmほどの深さから水気がなく、乾燥した状態でした。

このような工夫により、剪定した枝をゴミとせず、環境改善の資材として有効活用することができます。
持続可能な茶畑管理への一歩
今回の整備作業では、剪定鋏と手ノコギリを使用し、人力のみで行いました。
この方法は、体力的・経済的な負担が少なく、持続可能な茶畑管理の一例となります。また、三年番茶の生産を通じて、放棄茶畑の再生や鳥獣害の抑制にも寄与する可能性があります。
今後もこの場所での取り組みを継続し、地域の課題解決に貢献していきたいと考えています。
▶作業の様子はInstagramのリール動画でご覧いただけます。